対立の歴史に終止符を!
カンボジアはインドシナ半島の真ん中にある。東南はベトナム、北西はタイ、北はラオスに囲まれている。そんな地形の関係で、カンボジアの歴史は隣国との領土をめぐる争いの歴史といえる。
カンボジアの国土は日本の半分、カンボジア人に言わせると、昔は今の2倍あったという。ベトナム南部のメコンデルタは「コーチンチャイナ」といって元々カンボジア領だったが、幾多の戦争を経て現在はベトナムの領土に、タイ東部も元はカンボジア領だったが、戦争でタイに取られたという。ベトナム南部を南カンボジア、タイ東部を北カンボジアと呼ぶカンボジア人もいる。
そんな関係からか、カンボジア人はベトナム人、タイ人が嫌いだ。日本人がベトナムを旅した後にカンボジアへ入国する際には、ノンラー(半円形の帽子)とアオザイ(ベトナムの民族衣装)を身に着けないようにと、旅行会社から注意が出されるほどだ。
先日、プノンペン市郊外にあるベトナム人村を訪れる機会があった。300人あまりのベトナム人が身を寄せ合い暮らしている様子で、カンボジア人を寄せ付けない雰囲気を感じた。村の中心にカトリック教会の本堂があって、ほとんどの家庭にマリア像や写真が飾られていた。仏教を信奉するカンボジア人にとっては考えられない風景だ。
タイとの関係もよろしくない。タイ人女優が「アンコールワットはタイのもの」と言ったか言わないかで暴動にまで発展、プノンペン市内のタイ系工場、レストラン、ホテル、大使館までもが襲撃された事件が5年前にあった。最近はタイとカンボジアの国境にあるヒンドゥー教寺院遺跡「プレアビヒア」が今年の7月に世界遺産の登録が決まったことで国境紛争が再燃、銃撃戦があってカンボジア兵士が2人死亡した。
この2カ国に比べると、ラオスとの関係は比較的良好だ。接する国境が短いこともあって領土問題が少なく、何しろベトナム・タイに比較すればカンボジアとラオスはどんぐりの背比べでGDPも似たり寄ったりだから、嫉妬の対象にもならないのだろう。しかし最近ラオスの発展著しく、最近のGDPはラオスが大きくリードしているというから、それを知ったらカンボジア人の感情が微妙に揺れ動く可能性がある。
しかしいつまでも対立していては、21世紀の基調である共存共栄の新時代についていけなくなる恐れがある。世界はブロック化の傾向があり、東南アジアも「ASEAN」として地域共同体が構築され、将来「ユーロ」みたいに通貨統合の時代が来るかもしれない。
カンボジア人の高いプライド、クメール民族としての誇り、伝統を重んじる国民性、どれも大切だが、この小国が生き残るために今何が必要なのか、真剣に考える時がきている。
2008年10月24日 理事長 根 岸 恒 次
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